まず、余計な話は脇に置きましょう。ワインは複雑である必要がないし、楽しむために小難しい用語を何百も覚える必要もありません。とはいえ、圧倒されるのも事実です。何を頼むか決めたいだけなのに、隣の誰かがグラスを傾けて「タバコのニュアンスがある」などと語りはじめる(正直に言うと、身に覚えがあります)。この入門記事は、そのあたりをひとつずつほどいていきます。ワインリストを前にしても、店の棚で一本を手に取っても、少しずつ迷わなくなるように。
はじめる前に、ひとつ驚く数字を。世界には10,000を超えるブドウ品種があります。そう、一万です。ワインに広く使われているのはそのごく一部ですが、それでも、よく耳にする5〜10種類とは桁が違います。ここでは、身近で親しみやすいものに絞って話を進めます。
赤ワイン
赤ワインは、赤や黒いブドウから生まれます。色と複雑さの鍵を握るのは果皮です。発酵のあいだ果汁と一緒に過ごし、赤ワインらしい力強い風味とタンニンを残していきます。よく見かける品種を挙げると、Cabernet Sauvignon(力強くフルボディ。ブラックベリーとカシス、オーク由来のバニラやスパイスの香りも)。Merlot(もっと穏やかで、みずみずしいプラムとブラックチェリーに、チョコレートの気配。最初の一本にうってつけです)。Pinot Noir(軽やかでエレガント。赤い果実と、森の下草のような土の香り)。そしてブレンドもあります。ボルドー(Cabernet SauvignonとMerlot)や、ローヌ(Grenache、Syrah、Mourvèdre)が代表です。ちなみに、実際にワインづくりに使われている黒ブドウは1,300品種を超えます。
白ワイン
白ワインは、たいてい白ブドウから造られます(果皮を外せば、黒ブドウからも造れます)。軽やかで、きりっとしていて、爽やか。Chardonnayは変幻自在です。オーク樽で熟成すればクリーミーでバターのように、樽を使わなければ柑橘や青りんごの引き締まった味わいに。Sauvignon Blancは酸が高く、ライムや青りんご、草を思わせる香りが立ちます。Rieslingは甘口で知られますが、辛口もあります。花の香りに、桃や洋なし、蜂蜜。世界で使われている白ブドウは1,000品種以上あります。
ロゼ、オレンジ、スパークリング、そしてデザート
ロゼは赤と白の橋渡しです。黒ブドウを使い、果皮と果汁が一緒に過ごす時間を短く抑えます。プロヴァンスのロゼは軽やかで辛口、きりっとした味わい。White Zinfandelはもっと甘く、果実味が前に出ます。オレンジワインは、赤のように造った白です。果皮と触れ合うことで、しっかりした風味とタンニン、そして琥珀色をまといます。土の香りが漂うジョージアのクヴェヴリのものから、爽やかで香り高いイタリアのものまで、その幅は広いです。
スパークリングワインは、泡があるだけで場が華やぎます。Champagneを名乗れるのは、法律上シャンパーニュ地方のボトルだけ。とはいえ、Prosecco(果実味豊かで軽やか、手が届きやすい)やCava(きりっとバランスがよく、りんごと柑橘)も素晴らしい選択です。デザートワインは甘く、濃密です。Port(ドライフルーツ、ナッツ、チョコレート)、Sherry(辛口から甘口まで)、Sauternes(「貴腐」が甘さを凝縮させます)、アイスワイン、そして遅摘みのスタイル。
基本の言葉
口の中で感じるワインの重さです。牛乳で考えるとわかりやすい。ライトボディは無脂肪乳、ミディアムは普通の牛乳、フルボディは舌にまとわりつく生クリーム。
主に赤に。口の中が乾き、きゅっと縮むあの感覚です(濃い紅茶を思い浮かべてください)。果皮、種、梗に由来し、ワインに骨格を与えます。
きりっとした爽やかさの正体です。酸が高いと生き生きと引き締まり、低いと穏やか、時に間延びして感じられます。
アロマは、若いワインが最初に見せる香り。果実、花、ハーブ。ブーケは、熟成のなかで育つ複雑な香り。革、タバコ、バニラ。
飲み込んだあとに残る味わいです。長く、層のある余韻は、たいてい質の高さのしるしです。
選ぶときのヒント
シーンから考える。魚介やサラダには軽いワイン、ステーキには重めの赤。簡単なところから。Pinot NoirやRieslingは親しみやすい入り口です。遠慮なく聞く。「果実味のあるワインが好きです」の一言で、まともな提案は返ってきます。冒険する。居心地のいい場所を出たときにこそ、次のお気に入りは見つかります。
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テイスティングの手順(背伸びは不要)
1. 見る。色と澄み具合を確かめます。2. 回す。香りがひらきます。グラスを伝う「脚」は、アルコールや糖の多さを教えてくれます。3. 嗅ぐ。鼻をグラスに入れ、口を少し開けて、浮かんできたものに想像力を委ねます。4. 味わう。舌全体に行き渡らせて。果実味は、厚みは、軽さは、辛口かどうか。5. 決める。ここがいちばん大事です。好きか、好きじゃないか。好きなら、それでいい。違うなら、次へ。
「大事なのは、自分が好きなものを見つけて、そこから積み上げていくこと。正解も不正解も、ありません。」